5月25日(土)、熱海市にある「Present Tree for 熱海の森(以下:熱海の森)」へ、学生メンバーを交えて視察へ行ってきました。ご一緒したのは芝浦工業大学建築学部の山代教授と学生たち、昨年度「熱海の森」をフィールドとして「熱海の森プロジェクト」に取り組んでいた東京大学OEGsのメンバー、そして森づくり・地域づくりに興味のある学生・若手の皆さん。総勢27名で熱海の森を視察後、感じたこと・考えたことについてディスカッションを行いました。
熱海の森は、約半世紀にわたって放置された里山林。かつて熱海には薪や炭の原料となる木材を採取するための薪炭林が広がり、豊かな森林が人々の生活を守っていました。しかし、急峻な地形であることから管理の難易度が高く、日本で林業が衰退すると共に手入れが行き届かなくなり、現在では放置された旧薪炭林が優占している状況です。
熱海の森を明るく豊かな森に再生するため、土砂流出防備保安林に指定された7.5 haの森を認定NPO法人環境リレーションズ研究所が引き取り、2010年からボランティア中心の植林を行っていた場所が、下多賀にある「熱海の森」です。しかし近年は、関係者の高齢化やコロナ禍などの理由から活動を停止。その後、2022年に環境リレーションズ研究所が支援している東京大学「OEGs育成プログラム」の学生が中心となり、熱海の森の再生に取り組む熱海の森プロジェクトが発足。地域住民や地域外市民から成る森林管理を担うコミュニティを熱海市につくろうと学生たちが奮闘しました。現在は森林の現状を知るフィールドとして、各所から視察の受け入れを行っています。
ご参加いただいた芝浦工大建築学部の学生の皆さんの、熱海の森訪問のテーマは「建築も街づくりの一環。木造建築をベースに、実際山の中に入って何ができるかを考える」。入口となる鹿ヶ谷公園までは車で行くことができますが、ここからは徒歩で山へ分け入り「熱海の森」を目指します。
道なき道を尾根伝いに進む一行。前回訪問時に樹に付けたピンク色のすずらんテープを目印に、列になって進んでいきます。都市生活を送っている私たちは、普段こういう「人の手が入らない、野生の動植物の領域」に足を踏み入れることはほぼないため、皆さんドキドキワクワクの様子。ちょっと道に迷うハプニングもありましたが、山に分け入ってから1時間20分、ようやく現地に到着しました…!
熱海の街と海を見下ろすオーシャンビューの山頂でお昼ごはんをいただきます。苦労して登ってきた甲斐があると思わせる景色、気持ちがいいですね! みんなで集合写真をパチリ☆
10年ほど前に植えた木々の様子を視察すると、イノシシやシカにだいぶ食べられてしまっている現状がわかります。周辺地域に生えている樹はシカが食べないヒイラギやアセビなどが中心で、改めて獣害の深刻さを感じることができました。
視察を終え、帰路につきます。20代の若者たちが中心だったとはいえ、道なき道の急峻な地形を歩くのはさすがに疲れましたね…。「なかなかできない体験で、すごく楽しかった!」という嬉しい声が聞かれた反面、「でも継続的に行くのは大変だよね」という意見も出ました。
ここから芝浦工業大学の施設「熱海セミナーハウス」へ移動し、今回の体験をふまえてグループディスカッション。「そもそも森には人が入るほうがいいのか」「放置林はどうしたらいいか」「この課題をどうまちづくりに組み込むか」といった議題から、「担い手の負担」「行政の果たすべき役割」「林業の魅せ方」などなど、様々な意見が飛び出しました。時間の許す方は、最後の懇親会までご一緒させていただきました。1日ありがとうございました&お疲れ様でした!
日本の国土の7割を占める森林。まちづくりを志す方々にとって、森林の現状を知ることは日本の現状を知ることにつながります。この日の「Present Tree for 熱海の森」での体験が、皆さんの今後の糧になれば幸いです。
Copyright ©URBAN SEED BANK All Rights Reserved.