2018/07/12
【動画配信スタート♪】WABI SABI SATOYAMA アートの世界から見たSATOYAMAの価値

こんにちは、アーバンシードバンク事務局です。

先日、知る人ぞ知る市ヶ谷のプレイスWさんで、里山をキーワードにトークイベントを行いました。当日のご意見は只今取りまとめ中ですが、先行して動画をYOUTUBEへUP致しました。 ※質問と回答は、2018年7月19日に追記※

 

■YOU TUBE : アカウント名は「ebagency」です

https://www.youtube.com/channel/UCb_akHfrxUCZ_trRA7Ov00g

 

 

全部で3部構成となっておりますので、適宜ご覧ください。

 

WABI・SABI SATOYAMA ~アートの世界から見た里山の価値~①

イントロダクション:真っ暗な森から芽生えた命を都市に迎え入れる活動(URBAN SEED BANK)

環境ビジネスエージェンシー 代表取締役 鈴木敦子

 

【質問と回答】

【鈴木氏へ】

Q:里山BONSAI の5年、10 年後の状態。どのくらいメンテナンスが必要か。

A:元々里山は、人が手を入れ続けることで、半永久的に存在し続けてきました。同じように、里山BONSAIの植物たちは、里山に自生する天然物なので、水遣りや時々の剪定を怠らなければ、恒久的に存続します。里山BONSAIに植え込まれる里山由来の苗木たちは、その時々にその植生国土区分の気候風土に見合った種子でなければ、里山で発芽することはありません。よって、元来とても生命力が強いのです。メンテナンスは次の通り。

http://urbanseedbank.com/wp-content/uploads/2018/07/資料29_里山BONSAI「ひこばえタイプ」の育て方20170809.pdf

 

ですが、この里山BONSAIの器は、国産間伐材を無垢のまま利用しているため、割れやひびなどが入りやすく、その耐用年数は、残念ながら3~4年ではないかと思われます。ちなみに、2年半前に制作した試作基第一号が私の自宅に在りますが、器に細かなヒビが沢山入っているもののまだまだ元気です。

 

Q:【鈴木氏へ】都市・工業地帯・里山、それぞれのバランスの最適解。

A:その解はまだ誰にも解りません。

少なくとも、現在、都市緑化に使われている植物の地域性在来種のボリュームについてのデータが在りません。最も近いものでは、「法面緑化に用いられる主な在来緑化植物(種子)の推定供給量と比率」として「約1.1%」という数値が公表されています。(出典:平成18年度「生態系保全のための植生管理方策及び評価指標検討調査報告書」環境省 農林水産省 林野庁 国土交通省)

推して知るべし、です。

日本の里山林の殆どが荒廃していることにより、地中に眠る種が芽生えることができず、日本の植物の約25%が絶滅危惧化しつつあると言われている中、在来種で100%都市緑化を図る必要は在りませんが、せめてもう少し、古来、日本の四季を彩ってきた植物を都市に増やすべきだと思いませんか?

 


WABI・SABI SATOYAMA ~アートの世界から見た里山の価値~②

メイントーク:アートの世界から見たSATOYAMAの価値

【スピーカー】東京画廊 代表取締役 山本豊津

【質問と回答】

・【山本氏へ】里山は社会資産(資源)と思うが、それを芸術として貨幣価値に換えた時に、その利益は誰が受けるのが適正か。どのように配分されるべきと考えるか。

回答:

里山を価値化するには、日本列島を近代以前の状態に戻すことです。観光立国とは、人口減少する我が国の収入をどのように計れば良いかを考えた時、列島そのものを外国人がアートとして観光できるような政策を政府が立てなければならない。
例えば近代の人々(主に西洋人)は江戸時代ではチラシにすぎなかった浮世絵をアートとして価値化しました。
日本列島の自然を見直すことを私はアート的視点と言っています。利益は日本人全体に還元するのではないでしょうか。

・【山本氏へ】日本の現代アートが非常に高額で取引されるようになっているとの事。それは何の価値に支えられているものなのでしょうか。人の精神に働きかける力に比例しているのでしょうか。
そのことと、里山の力がアートに影響する事にかなりの距離があるような気がします。

回答:

アートの価値は歴史に支えられています。歴史以前の縄文時代から今日まで歴史の継続を物として担保している国は世界でも少ないと考えられます。
日本の現代アートの価値を世界が認めているのは、世界の現代史と日本の現代史の相関性を世界の美術関係者が気がついたことに他ありません。歴史はその国の地政と関係があり、自然の上の営みに支えられていることを自覚している現代の日本人が少ないのは残念です。里山も人がメンテナンスしてつくり出した歴史的産物とも言えるでしょう。

・【山本氏へ】日本的な美は本当にどの程度理解されているのでしょうか。かっこいいから「cool japan」だからという要素はどのくらい?

回答:

ヨーロッパと言ってもイタリアは山の麓に済んでいるイメージがあり、日本と似ているところもありますか?
日本的な美意識を教育に取り入れている学校は少ないし、また家庭でも日本的な美を楽しむ人が少なくなっています。芸大でも日本の美意識を伝える書や花を教えていません。日常の生活に花を一輪でも日本の陶・漆などの花器に飾っている家は今あるのでしょうか?このような現状を踏まえなければ「Cool Japan」は英国の真似事にすぎないのでは。
ヨーロッパにも山はありますが、海とか山が近接しているところはごくわずかです。日本人は縄文時代に狩猟していましたが、海岸の貝を食べていました。
他の獣と違って貝は逃げません。日本人が穏やかななのはそこに由来していると思っています。逆に近代日本は獣化してきたのではないでしょうか?イタリアの半島も海に囲われているため日本と親和性がありますが、どちらかと言うと韓国に近いとも思っています。

・【山本氏へ】アートが何故、将来の価値を示唆するのだろうか?

回答:

アートは歴史が物象化した残存物です。未来は誰も正確に予測できません。当たり前に考えても未来は今の私たちがつくることから始まります。
つまり未来はすでに今始まっているので、現代アートを見ることによって今の私達を知ることになります。将来の価値はあなたの眼の前に現れていることを知ってください。

 

・日本の文化制度、2025年までにどの様に改革?本当の大枠で。

回答:

日本人は戦後の復興から生まれた意識制度の中にまだいます。資本の回転が止まり成長が終わったことから脱して資産の活用を考える社会を目指さなければなりません。2020年のオリンピック後に気がついても遅いので、今から資産活用の社会への移行の準備をしなければなりません。
2025年までにその方針資産活用社会の「文化政策」が立てなければ日本経済はただ沈んでいくでしょう。

 

・日本人が気付いていない日本の価値とは?

回答:

常に日本人とは何かを考えることから継続する価値が生まれます。近代国家としての日本を皆で考えましょう。

 

WABI・SABI SATOYAMA ~アートの世界から見た里山の価値~③

ダイアログ話題提供:グリーンビルディング等「認証制度」からみたSATOYAMA緑の価値

【スピーカー】ヴォンエルフ 取締役 永積 (安原) 紀子

 

【質問と回答】

・【永積氏へ】日本の「環境認証には」穴が有る。LEED で良いですね。米国発信でありながら、人間性、自然といえば日本がすべき道と思うのですが、永積さんはどう考えますか?

回答:

LEEDでは、基準を定めていますが、そのやり方については、それぞれのプロジェクトに委ねられています。おっしゃるとおり、日本ならではの自然との付き合い方や人間性の尊重により良い空間や建物を作れば、きちんと評価が受けられます。LEEDはグローバルに運用されていますので、良い取り組みを発信しようとすれば、全世界の人々の目に止まる可能性がありますので、日本独自の取り組みを世界へ向けて発信するツールとして捉えれば、将来、ベストプラクティスとして世界に広がっていくきっかけになるということも考えられると思います。

 

・【永積氏へ】人口減少の中で東京集中も止まらない日本で、新しい都市は生まれるのでしょうか。JINS のオフィスは目を引きますが、日本でアップルパークやグーグルの様な「革新的」と言う表現では足りないようなビルが出てくる可能性はまだ先と思います。それは設計者、施工者の発想や意識の問題でしょうか。

回答:

以下、全て個人的な意見ですが、新しい都市が生まれるかどうかという点について、その可能性は十分あると考えます。なぜなら、人が移動可能な時代になってきているからです。今までは、中央と地方では、情報量は人の交流という意味で圧倒的な差がありましたが、都市は物価の高騰や土地の不足、環境汚染、過密、少子化など、多くの問題も抱えつつあり、今後は大都市居住を選択しない人々が増える可能性があります。その際に、今後、より簡単に拠点を移動できるインフラや素地が整っていけば、日本国内のみならず、海外へ移住する人々の数がますます増えることは想像できると思います。企業に雇用されず個人ベースで複数の仕事を掛け持ちし、自然の多い場所で生活するような、従来のライフスタイルとは異なる暮らしを選択することが若者を中心に主流になっていくことで十分可能性はあるのではないかと思います。設計者、施工者の発想というよりは、従来の発想を超えた人種が出現し、増殖することで革新的なライフスタイルが一般的になっていくのではないかと思います。

 

・【永積氏へ】建築物への認証でWELL などでは健康に対する効果が評価されているということでしょうか。どのようにして健康に良いか悪いかを評価しているのでしょうか。

定量的あるいは科学的に評価することが難しいと思うのですが、木造住宅が健康に良いかどうかと言う事を一般の消費者に示したいので。

回答:

建築物において、何が、健康と快適性に影響を及ぼすかについて、WELLの開発主体である米国のデロス社(Delos Living LLC)は、科学者、医者、建築家、快適性分野のパイオニアの、約7年に及ぶ協働研究の末開発されたと言っており、可能な限り科学的根拠に基づいた定量的評価を行おうとしていることが感じられる評価システムになっています。木造住宅であれば健康に良いという分かり易い評価基準はWELLにはありませんが、木造住宅であれば、VOCの発生が低いため室内空気質が良くなる、吸湿性があるため室内の湿度が比較的一定に保たれる、断熱性がいいためヒートショックが起こりにくい、木材から発散するある種の物質が健康に良い影響を及ぼす、など、いろいろな要素が複合的に作用して、結果的に「木造住宅は体に良い」、という状況が作り出されるものと推察されます。データを集めることである程度客観的に示せるのではないかと思います。WELLの評価基準も、まだまだ粗いところもありますが、健康と建物の関係を考えるきっかけを与えるものとして、一読に値すると思います。

 

・【永積氏へ】サスティナビリティの認証を受けるインセンティブは何かあるのですか?趣旨は分かりますが、具体的に説明していただきたかった。

回答:

米国内では、許認可に要する時間の短縮化などの直接的なインセンティブや、一定の床面積以上の特定用途の建物ではLEED認証取得が必須となっている州があるなど、義務化されているケースもあります。また、補助金を受けるためにLEED認証取得が要件となっているケースもあります。米国外でもLEEDに絡めたインセンティブを自治体などの公的機関が提供するケースが出てきているということも聞いていますが、数としてはまだまだ少ないです。

日本では、LEED認証取得に絡んで公的機関が提供するインセンティブはありませんが、同業他社との差別化は対外的な発信と考えられています。テナントビルであれば、優良なテナント(特に外資系)誘致に役立つだろうと考えられている場合もあります。自社ビルであれば、企業としてのサステイナビリティへの取り組みを投資家(特に海外投資家)に向けて発信するツールと考えられています。また、設計事務所やゼネコンなどは、LEED認証プロジェクトの経験を本業に役立てるために取組まれるということも考えられます。

最近は、サステイナビリティに取組まないことがリスクになってきていますので、発信のための便利なツールとして期待されてきているという側面もあると思います。

 

・【永積氏へ】認証制度に支払う費用の内、どのくらいがアメリカ側に流れるのか。

回答:

米国に本拠地を置く審査機関であるGBCIに支払う審査費用は認証を受けようとする床面積によって増減があり、小さいビルでは数十万レベル、床面積が何万㎡もあるビルでは数百万レベルになります。

 

 

動画をご覧いただき、是非、どのような「里山価値の活用方法」があるか?については、引き続きいろいろなアイディアを募集しておりますので、ご意見をお寄せください。

 新しい時代の、新しい里山の、日本の価値を、ご一緒に創っていくことが出来ればと思います。

引き続きお支援のほどよろしくお願い申し上げます。

 

アーバンシードバンク事務局 一同

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